行事
一水会連続シンポジウム第4回報告

一水会研究委員会委員長  倉橋 忍(研究委員山田長正)
一水会連続シンポジウム第4回「超高齢化社会における弁護士の役割」

一水会研究委員会委員長    倉橋忍(研究委員 山田長正)

1.一水会連続シンポジウム第4回「超高齢化社会における弁護士の役割」は,10月8日午後6時30分の定刻に,司会進行役の鳥山半六会員の発声で始まりました。
2.一水会研究委員会委員長の倉橋忍会員による開会挨拶の後,まず、高齢者・障害者総合支援センター運営委員会の委員である芦田如子会員による基調報告が行われました。
  芦田会員からは,「超高齢化社会の現状」というテーマで,パワーポイントを用いながら日本における高齢者の人口割合,高齢社会の定義,大阪府の高齢社会の現状と今後の予測,高齢者の生活の現状,高齢者が抱える問題,成年後見の利用状況,以上を前提に弁護士に求められる役割等について発表を行っていただきました。
3.ついで、各パネリストに参加をいただき、この日のコーディネーターである高齢者・障害者総合支援センター運営委員会(ひまわり)委員である井上計雄会員の進行のもと、活発な発言・議論となりました。 
まずは、最初に,大阪市社会福祉研修・情報センター相談支援課課長である中村淳子氏から,大阪市社会福祉研修・情報センターの活動概要,相談実績,相談内容等について、説明をいただきました。
 中村淳子氏の説明によりますと、同センターには総合相談コーナーが設けられており,その中で総合相談,専門相談と分かれていること、前者の総合相談を受ける中で,必要に応じて専門相談を実施し,高齢者のニーズに応えていること,専門相談の中で法律に関する相談が最も多く,弁護士がこの相談に応じているとのことであり、さらに、近年は権利擁護相談が増加している等の実状についても説明をいただきました。
4.次に,高齢者・障害者総合支援センター運営委員会委員長である青木佳史弁護士から、高齢者・障害者総合支援センター運営委員会における活動内容の説明(出張相談 や電話相談を行っていることが特徴であること等)とともに、活動実績についての報告があり,現在,相談件数が増加中であることや,高齢者から弁護士のニーズ高く,受任率も高いこと,後見の件数が増加していること等のお話しをいただきました。さらに、高齢者・障害者総合支援センター運営委員会は、行政との連携を取れていることや他業種との連携を図るため,高齢者の総合的支援が可能であるとの説明もいただきました。
5.続けて、遺言・相続センター運営委員会委員長である井上圭吾弁護士から,遺言・相続センターが平成20年9月に設立されたこと,その設立の経緯(遺言に関する業務が隣接業種や信託銀行に奪われている現状があり,弁護士会として業務を確保する必要があること等)や遺言・相続センターの活動内容(電話相談を無料で20分受け付けていることなど),相談件数,弁護士の受任件数に関するお話しがあり、あわせて、現在,広報活動に力を入れており,認知度を高めていることについての説明をいただきました。
6.このような説明を受けて,さらに、法律相談の窓口である大阪弁護士会総合法律相談センターの立場からは,総合法律センター運営委員会委員長である畑守人会員より,総合法律センターと高齢者・障害者総合支援センター運営委員会との関係(総合法律センターでは電話相談や出張相談ができなかったこと,高齢者の需要に応じるために高齢者・障害者総合支援センター運営委員会では,このような電話相談・出張相談をできるように配慮したこと等),総合法律センターと遺言・相続センターとの関係(従来,遺言センターが機能しなかった反省を踏まえて,遺言・相続センターを設立したことや,同センターでは弁護士から電話を行うというサービスも行っていること等),通常の法律相談でも高齢者による相談案件が増加しているため,今後,高齢者のニーズに応えるために高齢者・障害者総合支援センター運営委員会や遺言・相続センターの役割が重要になること等について、問題点の分析や様々な説明をいただきました。
これらの説明に対し、中村淳子氏からは,現在,大阪市社会福祉研修・情報センターの相談窓口から弁護士に対し,それなりにうまく引継がなされているものの,高齢者の権利侵害が見過ごされているケースもあり,そのようなケースを発見できるようなネットワーク・仕組みを構築することが今後の課題である旨の発言があり、青木佳史弁護士 からは,高齢者・障害者総合支援センター運営委員会としては,行政と連携できている ことなどから,知名度は高いものの,有料老人ホームや銀行,富裕層等では認知度が低く,そのような方向で認知度を高めることが必要であることや,後見の分野については隣接業種の認知度が高いことなどの実状に関する発言が、さらに、井上計雄会員から,今後,弁護士として業務拡大を行うためには,広報が重要であり,そのため,公証人役場において遺言・相続センターを紹介してもらったり,金融機関と遺言・相続センターとが連携して,弁護士にも業務拡大できる機会を増やしていくことの発言・提案をいただきました。
  また,畑守人会員から、弁護士へのニーズを増やすために,常設型法律相談センターを地域的に拡大したり,弁護士が大阪府下に出張し,かつ受付や集金も弁護士自らが行うことを前提に,相談業務を行うという構想があることの説明をいただき、利用者のニーズに応えたい、また、答えるべきではないかとの提案がありました。
7 ついで,余田博史会員から、事業承継について特別報告があり、具体的には、中小企業の現状や,事業承継の方法,各方法のメリット,デメリット,「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」についての説明,弁護士の事業承継への関与についての報告をいただきました。
8 会場からの,弁護士として高齢者の権利を本当に守るために,どのような意識が必要なのかという質問に対しては、青木佳史弁護士から,弁護士と社会福祉士が協同して相談に乗ることで,高齢者の生活全体を見渡し,本人の特性に応じ,他業種と連携しながらサポートすることが重要である旨の発言があり、その中で,弁護士としては,自分ができることの限界を認識すること,高齢者を敬うこと,高齢者を対等に扱うこと,認知症の実態を知ることが重要である旨の指摘をいただきました。
また,井上圭吾弁護士からも,弁護士を支援するために,遺言・相続センターでは,法律知識やコミュニケーション能力についての研修を行ったり,メーリングリストを用いて弁護士の悩みを聞く等のサポートがあることの説明があり、さらに、青木佳史弁護士から,高齢者・障害者総合支援センター運営委員会の弁護士に対する支援内容(後見人アドバイザーの存在,研修の実施,必要に応じた部会の介入,各機関との連携)に関する説明をいただきました。
9 以上を経て,各パネリストから、最後に、今後の弁護士の課題・弁護士への希望等に関する発言・提言等をいただきました。
  中村淳子氏からは,弁護士と福祉との連携を期待したい旨の発言をいただきました。
  青木佳史弁護士からは,高齢者の分野における人材が不足しているので,ぜひとも若手の参加を期待したい等の発言が、井上圭吾弁護士からは,紛争解決を視野に入れて,広い視点でこの分野に取り組んで欲しい旨の発言がありました。
  畑守人会員からは,弁護士の専門性が重要になってきているので,真の専門性を身につけて欲しい旨の発言がありました。
10 最後に,幹事長の檜垣誠次会員の閉会挨拶があり,シンポジウムは無事終了しました。
 白熱した議論により,本日のシンポジウムは予定時間の午後8時30分をオーバーし,弁護士会館閉館時刻の午後9時に終了しましたが,多くの参加者は最後まで残っていただいており、また,参加予定者の9割が実際に参加いただくなど、今回のテーマに対する関心の高さが窺われ、極めて有意義な「第4回シンポジウム」となりました。
                                                   以 上


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